about CORDE
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生まれ育った故郷の海辺は、
子供の頃からの散歩道でした。
小さい頃は親に連れられて、
思春期にはひとりで、何度歩いたかわからない特別な場所。
人間の世界の気配は海岸の砂丘を越えるとふと薄れ、
誰も顧みない砂浜の漂着物はみな歳を取っていて、
潮に洗われ、波にもまれ、潮風に吹かれ、
転がり果てて砂浜に打ちあげられている。
流転の果ての美しさと腐敗に、平等に吹きつける風
“いま”の10年後なのか、20年後なのか、
自分が見ているのは100年後なのか、わからなくなる。
木片を手に取ってみる。
樹脂分はすっかり抜けて、小さく砕け、角は丸くなり、
指でつぶれてしまいそうなほどに風化したいのちのかけらは、こうして来たところへ還ってゆく。
くちゃくちゃにしおれて、脱水機から出てきたような海鳥の死骸を、風と砂が弔ってゆく。
タイヤやテレビの残骸、靴、人形、それら人の手の作り出した、
還る場所を持たないものを、風と砂が弔ってゆく。
それら眼の前にひろがる風景は、
波打際の美術館として目に映りました。
長い時を経て、生まれてきたところへ還ってゆくもの
還る場所を持っているもの
美しく朽ちるもの
そういうものを、できる限りつくっていきたいと考えています。